トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

2011-01-01から1年間の記事一覧

現代歌人ファイルその133・中野昭子

中野昭子(なかの・あきこ)は1944年生まれ。兵庫県立尼崎高校卒。1978年に「ポトナム」に入会し頴田島一二郎に師事。1986年に「躓く家鴨」で第32回角川短歌賞次席。なおこの年の受賞者は俵万智であり、同じく次席となったのは穂村弘である。1987年に第1歌集…

一穂ノート・17

1930年、一穂32歳の時に刊行された第二詩集『故園の書』はアナーキズム的文学論の影響を強く受けた散文詩である。1923年に高橋新吉が登場し、1925年に萩原恭次郎が登場した。そういったダダーイズム文学の流れの下にあるようにも感じられる。 「空」は衒学的…

現代歌人ファイルその132・和田大象

和田大象(わだ・たいぞう)は1950年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。映画監督を志して日活撮影所で宣伝の仕事をした後に大阪に帰郷。家業の「ごま屋」を継ぎ、現在も経営者として働いている。「玲瓏」にて塚本邦雄に師事し、1989年に第1歌集「禊ぞ夏の…

掲載情報

東京新聞にエッセイ「出会えなかった友との話」を寄稿しました。4月13日(水)付け夕刊に掲載予定です。

一穂ノート・16

VENDANGE 去る日、もはや米櫃に一粒の糧なしと妻の訴ふる、さ れど一合の米は現実の秤にして、易くは補ひ難けれ。 画餅とはいひ、まづ一房の葡萄に添へて鼓腹撃壌之歌 を置き、子と共に唄ひぬ。 われは葡萄の収穫(とりいれ)。 大鎌にして穀倉、 かの落日の…

現代歌人ファイルその131・山田富士郎

山田富士郎(やまだ・ふじろう)は1950年生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。1985年に「未来」入会、岡井隆に師事。1987年「アビー・ロードを夢みて」で第33回角川短歌賞、1991年第1歌集「アビー・ロードを夢みて」で第35回現代歌人協会賞、2001年第2歌集…

現代歌人ファイルその130・中山明

中山明(なかやま・あきら)は1959年生まれ。駒澤大学文学部卒業。1980年に「炎祷」で第23回短歌研究新人賞を受賞。「詩歌」にて前田透に師事し、前田没後の1984年に「かばん」創刊に参加。同年、第1歌集「猫、1・2・3・4」を出版した。 歌集のタイトル…

掲載情報

発売中の角川短歌4月号の特集「若手歌人たちは今」に、短歌『みづのつばさ』5首およびエッセイ『なぜ短歌か』を寄稿いたしました。1976年生まれから1991年生まれまで、総勢16名の歌人が参加しています。短歌 2011年 04月号 [雑誌]出版社/メーカー: 角川学…

現代歌人ファイルその129・山下泉

山下泉(やました・いずみ)は「塔」所属の歌人で、2005年の第1歌集「光の引用」で第31回現代歌人集会賞を受けている。歌集には生年や出身地といったプロフィールは付されていないが、中学生のときに初めて短歌を作り、大学ではドイツ文学科でリルケを専攻し…

一穂ノート・15

Delphinus 空 鴎 波 岬 燈台 (海の聖母【マドンナ】!) ☆ 雲 驟雨 貿易風 潮の急走 海は円を画く (太陽は真裸だ!) 痙攣【ひきつ】る水平線 水の落魄 回帰線 流木 鱶! 泡 『Delphinus』とはいるか座のことである。天の川の付近を泳ぐイルカの象形である…

現代歌人ファイルその128・尾崎まゆみ

尾崎まゆみ(おざき・まゆみ)は1955年生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。1987年より「玲瓏」に参加し塚本邦雄に師事。1991年、「微熱海域」で第34回短歌研究新人賞受賞。神戸市に在住し、「玲瓏」編集委員を務めている。もともと詩を書いて「ラ…

DIVE★DOCUMENT 琴似屯田兵村のおしらせ

2011年3月28日から4月8日にかけて札幌市役所ロビーで行なわれる「屯田兵屋屋根柾屋根葺替改修工事竣工記念展示」イベントに参加します。札幌・琴似屯田兵村の遺構の屋根の葺替にあたってのイベントが行われ、それにあたって多くのクリエーターたちの作品に混…

現代歌人ファイルその127・真鍋美恵子

真鍋美恵子(まなべ・みえこ)は1906年生まれ、1994年没。東洋高等女学校卒業。1926年に「心の花」に入会し、印東昌綱に師事。1949年には「女人短歌会」発足に参加した。1954年、歌集「朱夏」で第1回新歌人会賞、1959年「玻璃」で第3回現代歌人協会賞を受賞…

現代歌人ファイルその126・西勝洋一

西勝洋一(にしかつ・よういち)は1942年生まれ。北海道学芸大学(現在の北海道教育大学)卒業。1963年に「短歌人」に入会し、1968年には「北海道青年歌人会」に参加。「短歌人」「かぎろひ」の編集委員を務める。旭川市を拠点に活動する、北海道を代表する…

一穂ノート・14

14 ユークリッド星座。 同心円をめぐる人・獣・神の、吾れの垂直に、氷触輪廻が軋んでゆく。 終夜、漂石が崩れる。 15 地に砂鉄あり、不断の泉湧く。 また白鳥は発つ! 雲は騰(あが)り、塩こゞり成る、さわけ山河(やまかは)。 『白鳥』第14章では再び幾…

一穂ノート・13

12 時の鐘が蒼白い大気を震はせる。 誰れも彼も還らない…… 屋上に鳥の巣が壊れかゝつてゐる。 13 灯を消す、燐を放つて夢のみが己を支へる。 枯蘆が騒(ざわ)めいてゐる。 もう冬の星座が来てゐた。 『白鳥」第12・13章は、白鳥が来る最大のハイライトがひ…

現代歌人ファイルその125・野樹かずみ

野樹かずみ(のぎ・かずみ)は1963年生まれ。広島大学文学部卒業。1991年に「路程記」で第34回短歌研究新人賞受賞。その後「未来」に入会し加藤治郎に師事。2006年に第1歌集「路程記」を刊行した。 新人賞の受賞から第1歌集の出版までに15年を要している。こ…

東郷雄二先生の「橄欖追放」にて紹介していただきました。

http://lapin.ic.h.kyoto-u.ac.jp/tanka/tanka/kanran69.html 京都大学の東郷雄二先生の短歌批評「橄欖追放」に拙作を紹介していただきました。ありがとうございます。

一穂ノート・12

10 無燈の船が入港(はひ)る、北十字(キグヌス)を捜りながら。 磁極三〇度斜角の新しい座標系に、古代緑地の巨象が現れてくる。 紛(なく)したサンタ・マリヤ号の古い設計図。 11 未知から白鳥は来る。 日月や星が波くゞる真珠貝市(かひやぐら)。 何処…

掲載情報

ながらみ書房「短歌往来」3月号の特集「2010年のベスト歌集・歌書」のアンケートに回答しました。2010年刊行の優れた歌集・歌書を6冊挙げました。http://www.nagarami.org/

現代歌人ファイルその124・相良宏

相良宏(さがら・ひろし)は1925年生まれで、1955年に結核で没した。中央工業専門学校(現・中央大学理工学部)航空機学科中退。アララギ系の短歌結社「新泉」にて近藤芳美の選を受け、後に「未来」の創刊に参加した。没後の1956年に遺歌集「相良宏歌集」が…

一穂ノート・11

8 白い円の仮説。 硝子の子午線。 四次元落体。 9 波が喚いてゐる。 無始の汀線に鴉の問がつゞく。 砂の浸蝕…… 『白鳥』第8章はこの長大な詩の最大の転換点と言えると思う。三つの体言止め。いずれも非常に抽象的なシュールなイメージである。具体性のある描…

一穂ノート・10

6 蘆の史前…… 水鳥の卵を莞爾(につこり)、萱疵なめながら、須佐之男のこの童子(こ)。 産土(うぶすな)で剣を鍛つ。 7 碧落を湛へて地下の清冽と噴きつらなる一滴の湖。 湖心に鉤を投げる。 白鳥は来るであらう、火環島弧の古(いにしへ)の道を。 『白…

一穂ノート・9

4 石臼の下の蟋蟀。 約翰伝第二章・一粒の干葡萄。 落日。 5 耕地は歩いて測つた、古(いにしへ)の種を握つて。 野の花花、謡ふ童女は孤り。 茜。 『白鳥』の第4・5章は作品においてマイナーコードの部分にあたるような、静かな調べの2連である。4章は…

現代歌人ファイルその123・生沼義朗

生沼義朗(おいぬま・よしあき)は1975年生まれ。日本大学芸術学部卒業。1994年に「短歌人」に入会し、蒔田さくら子の選歌を受けた。2002年に第1歌集「水は襤褸に」を刊行して第9回日本歌人クラブ新人賞を受賞。2005年より歌誌[sai]にも参加している。 生沼…

一穂ノート・8

2 燈(ラムプ)を点ける、竟には己れへ還るしかない孤独に。 野鴨が渡る。 水上(みなかみ)はまだ凍つてゐた。 3 薪を割る。 雑草の村落(むら)は眠つてゐる。 砂洲(デルタ)が拡(おほ)きく形成されつゝあつた。 『白鳥』第2章および第3章は村落生活の…

掲載情報

明日2月4日(金)北海道新聞夕刊の「創ティータイム」というコーナーにてインタビュー記事が掲載されます。 『トルタの国語』の話がメインになるようです。 ちなみに先日同コーナーに文月悠光さんのインタビューも掲載されましたが、これは一緒にインタビュ…

現代歌人ファイルその122・富小路禎子

富小路禎子(とみのこうじ・よしこ)は1926年生まれ、2002年没。女子学習院卒業。植松寿樹に師事。1946年「沃野」創刊に参加。1954年、第1回沃野賞。1955年、第3回新歌人会賞。1992年に「泥眼」で第28回短歌研究賞を、1997年に「不穏の華」で第31回迢空賞を…

一穂ノート・7

一穂の代表作中の代表作『白鳥』は、十五章に分けられた三行詩である。1944年10月の「詩研究」に『荒野の夢の彷徨圏から』として五章が発表されたのを初出とする。1946年10月の「芸林間歩」にて全十二章と長大化し、最終的には十五章となって1948年の第4詩集…

かばん新人特集号完成

かばん新人特集号第5号が完成しました。 山田は短歌作品「珈琲牛乳綺譚(ミルク増量ver.)」および回文集「山田の回文集」を寄稿しました。 詳しくはかばんブログのページにて。http://kaban-tanka.seesaa.net/category/4905725-1.html