2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧
尻にあるネジさえ巻けばシンバルを失くした猿も掌を打ち鳴らす 第2歌集「ドライドライアイス」から。ネジ巻き式でシンバルを叩く猿のおもちゃ。シンバルを失くしてしまっても、ネジさえ巻けば空っぽの手を叩き続け、鳴るはずのない音を鳴らしているつもりで…
早坂類は1959年生まれ。東京デザイナー学院卒業。「詩歌」を経て「未来」に所属し、岡井隆に師事。1986年、「詩とメルヘン賞」受賞。1988年、第31回短歌研究新人賞次席。さらに1990年には「ユリイカの新人」に選ばれ、詩と短歌の両輪での活躍を開始した。199…
冬。どちらかといえば現実の地図のほうが美しいということ 第3歌集「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」から。一見すると散文として読んでしまいそうな歌であるが、しっかりと定型である。句分けをすると、「冬。どちら/かといえば現/実の地図/のほう…
多田智満子は1930年生まれで、2003年に没している。慶應義塾大学英文科卒業。歌人というよりも詩人として有名であり、詩集「川のほとりに」で現代詩花椿賞、「川のある国」で読売文学賞などを受賞している。歌集は没後の2005年に出された「遊星の人」一冊の…
クリスマスの炬燵あかくておかあさんのちいさなちいさなちいさな鼾 「歌壇」2010年2月号掲載作「新しい髪形」から。穂村弘の最新作である。「楽しい一日」に代表されるねじれたノスタルジー路線の延長線上にある歌だが、その作風も徐々に変化を始めたようだ…
大村陽子は1956年生まれ。1987年「形成」入会。1991年に「さびしい男この指とまれ」で第2回歌壇賞を受賞し、1993年に第1歌集「砂はこぼれて」を刊行した。 大村の歌の特徴は、きらめくような詩的センスの中に巧みに毒を混ぜてくるところにある。世界を見る視…
試合開始のコール忘れて審判は風の匂いにめをとじたまま 第1歌集「シンジケート」から。「シンジケート」には野球をモチーフとした歌がいくらか見られる。「ボールボーイの肩を叩いて教えよう自由の女神のスリーサイズを」や「夏の雲 水兵さんが甲板のベース…
吉田純(よしだ・あつし)は1976年生まれ。北海学園大学大学院文学研究科博士課程にて、菱川善夫に学んだ。2002年に「大日本果汁圧搾人夫」にて短歌研究新人賞候補となり、2004年に第1歌集「形状記憶ヤマトシダ類」を刊行し、北海道新聞短歌賞佳作を受賞した…
本日1月4日(月)北海道新聞夕刊に寄稿しました。 新春詠2首およびミニエッセイです。ご一読いただけたら幸いです。