2009-01-01から1ヶ月間の記事一覧
春の岬 春の岬旅のをはりの鷗どり 浮きつつ遠くなりにけるかも 三好達治の詩集「測量船・艸千里」を読む。叙情的な作風で有名な詩人である。ボードレールの全訳を手がけるなどフランス詩が専門の人だが、短歌・俳句にもかなり造詣が深い。「日まはり」という…
安藤美保は1967年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部国文学科卒業。1987年に「心の花」に入会し、1989年には「モザイク」で「心の花」連作20首特等第一席に選ばれた。大学院修士課程在学中だった1991年に、研修旅行中の比叡山にて転落事故死した。24歳だっ…
アトミック・ボムの爆心地点にてはだかで石鹸剥いている夜 自選歌集「ラインマーカーズ」から。この歌に関しては、穂村弘本人の詳しい自註がすでになされている。もともとNHK短歌スペシャルの歌会で広島に行ったときに作られた吟行詠である。原爆ドームを見…
「未来」の笹井宏之さんが急逝されたという。まだ26歳だった。彼とは歌会仲間であり、尊敬する同世代歌人でもあった。彼の歌はイノセントでピュアな感覚に研ぎ澄まされていて、匿名で提出されても「これは笹井節だ」とわかるほどだった。私は純白な笹井ワー…
ちゃんと「今の」アニメやマンガやコミケにどっぷり浸かってる=わかってるプロの歌人というのが、短歌外部の人間には黒瀬珂瀾くらいしか把握できないのはなにかこう惜しまれるというかもったいないというかもっと増えてくれたら嬉しいなとは思っています。 …
伯父が俳人なので、短詩形そのものに触れた機会としては短歌よりも俳句の方が先だった。今でも俳句を読むのは好きだが、句集の妙な字間の広さにはなかなか慣れない。 「海藻標本」は1985年生まれの若い俳人の第一句集である。タイトルの「海藻標本」とはすな…
現代詩文庫(思潮社)の「池井昌樹詩集」を読む。池井昌樹は1953年生まれの詩人で、抒情詩の名手である。この人の詩はひらがなを多用した七五調のものが多い。韻律感覚がかなり短歌に近いかもしれない。 ふしぎなかぜが やがてついえるにくたいと やがてつい…
浜田康敬は1938年生まれ。湘南高校通信制卒業。1961年に「成人通知」で第7回角川短歌賞、1974年に歌集「望郷篇」で第1回現代歌人集会賞を受賞した。短歌結社に属さない無所属歌人であり、宮崎県に在住しているため中央歌壇との交わりも多くはない。孤高とい…
微笑んだガキのマネキン満載のワゴンが燃え上がる分離帯 第2歌集「ドライドライアイス」から。この歌における「ガキ」という言葉の遣い方にはかなりの違和感を覚える。そこだけ極端に自我が主張されているようで妙に浮いて見えるのだ。しかしこれは、瞬間最…
[sai]2号届く。気鋭の若手歌人が集った同人誌である。編集人は鈴木暁世。今号は「からだからでるもの」がテーマとのこと。テーマゆえかエログロ的な歌が目立った。黒瀬珂瀾の評論「全円が影となるとき ―春日井建におけるHIVのイメージ―(1)」は力作だった…
蝦名泰洋は1956年生まれ。青森高校卒業。手元にあるアンソロジー「現代短歌の新しい風」には「オラクル」所属、「パンの会」会員と記されている。つまり大規模な短歌結社に属してはいないうえに、どうやら現在も青森に住んでいるらしい。短歌雑誌などに作品…
松野志保は1973年生まれ。東京大学文学部卒業。1993年に「月光」に入会し、福島泰樹に師事。2000年、「永久記憶装置」で第43回短歌研究新人賞候補。2003年からは歌誌「Es」にも参加している。「モイラの裔」「Too Young to Die」の2冊の歌集がある。 松野…
ティーバッグ破れていたわ、きらきらと、みんながまみをおいてってしまう 第3歌集「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」から。この歌集の作中主体である「まみ」には「自分一人だけ取り残されてしまう」という被害者意識が非常に強い。掲出歌もまた「み…