2009-11-01から1ヶ月間の記事一覧
知んないよ昼の世界のことなんか、ウサギの寿命の話はやめて! 第3歌集「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」から。「手紙魔まみ、完璧な心の平和」という章からの一首。「まみ」の揺らぎ続ける心理が一貫して描かれ続けている章である。「ウサギ」は「…
柳宣宏は1953年生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。大学在学中に窪田章一郎に出会い、「まひる野」に入会。現在同誌の編集委員である。若いころから短歌をはじめているベテラン歌人であるが、第1歌集「与楽」を出したのが2003年とかなり遅く世に出た。第2歌…
今日11月25日(水)発売の角川「短歌」12月号に、角川短歌賞受賞後第一作『デバッグ・ジャパン』30首およびエッセイ『歌人には少し縁遠そうなテレビゲーム業界の話』を寄稿しました。ご一読いただけると幸いです。
耳たてる手術を終えし犬のごと歩みかゆかんかぜの六叉路 第1歌集「シンジケート」から。「犬」と題された一連の最後の一首。「耳たてる手術」とは犬の断耳手術のことだろう。シェパードなど一部の犬種は、もともとは垂れ耳であるが外見的な精悍さを醸し出す…
岡崎裕美子は1976年生まれ。日本大学芸術学部文芸学科卒業。1999年に「未来」に入会し、岡井隆に師事。2002年に「八月の桃」で未来賞次席となり、2005年に第一歌集「発芽」を刊行した。岡崎の歌でまず目を引くのはやはり大胆な性愛の歌であろう。 羽根なんか…
江畑實は1954年生まれ。関西大学社会学部卒業。1978年に「塔」に入会し、1983年に「血統樹林」で第29回角川短歌賞受賞。その後「玲瓏」の創刊に参加し、塚本邦雄に師事。6年間「玲瓏」編集長をつとめた。デビュー作となった「血統樹林」は塚本邦雄の強い影響…
乾燥機のドラムの中に共用のシャツ回る音聞きつつ眠る 第1歌集「シンジケート」から。「シンジケート」には同棲を思わせる歌が散見される。恋愛の社会化=結婚への恐怖を抱いていたのが初期の穂村弘であるが、同棲は許容範囲内だったようだ。この歌の場合「…
奥村晃作は1936年生まれ。東京大学経済学部卒業。大学在学中に「コスモス」に入会し、宮柊二に師事した。現在は「コスモス」の選者である。 奥村は「ただごと歌」の標榜者として知られている。ただごと歌という概念はなかなか複雑なものがあるが、端的に言っ…
ガードレール跨いだままのくちづけは星が瞬くすきをねらって 第2歌集「ドライドライアイス」から。ロマンチックなキスの歌である。この歌のポイントは「ガードレール跨いだまま」という点だ。車道と歩道を分けるところ。つまりそこは二つの世界の境界線であ…
11月7日(土)の朝日新聞夕刊「あるきだす言葉たち」の欄に『さやうなら、そしてハッピーバースデイ』8首を寄稿しました。詩歌界の若手ホープたちが掲載される欄とのことで、名を連ねることができるのはとても光栄です。 お目通しいただけると幸いです。※3…