トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

一穂ノート・22

「海の思想」には一穂の学生時代の思い出も綴られている。16歳で上京し、図書館で翻訳書を漁る生活が始まったという。それまで一穂少年は美術に対する興味が強かった。しかし文学にのめり込むうちに自ら絵筆を執ることはなくなり、もっぱら鑑賞専門になった…

現代歌人ファイルその138・中沢直人

中沢直人(なかざわ・なおと)は1969年生まれ。東京大学法学部卒業後、ハーバード大学法科大学院修了。1999年に「未来」「かばん」に入会し、岡井隆に師事。2003年に「極圏の光」で第14回歌壇賞を受賞。2009年に出した第1歌集「極圏の光」で第16回日本歌人ク…

掲載情報

札幌の古書店・書肆吉成が発行している「アフンルパル通信」第11号に、短歌「水銀遊戯」7首および長歌「歌え白鳥座(キグヌス)」を寄稿しました。「歌え白鳥座」は琴似ダイブのイベントで発表した朗読作品を一部改稿したものです。目次・申し込み先などは書…

現代歌人ファイルその137・しおみまき

しおみまきは1973年生まれ。「未来」に所属し、加藤治郎に師事。2008年に「ムリムラさん」で第51回短歌研究新人賞の最終選考を通過した。歌集は未刊行。 初めてしおみを知ったのは毎日新聞の歌壇である。ひらがなを多用したやわらかな字面と、呪文のような韻…

一穂ノート・21

エッセイ「海の思想」に綴られている一穂の少年期の回想である。津軽海峡に真向かう小さな漁村に彼は暮らしていた。 小さな村で、殆どが萱葺の軒並であつた。漁業といふ集団作業の必要から、この古い館はマクベスの砦のごとく大家族を擁してゐた。若くして家…

現代歌人ファイルその136・古谷智子

古谷智子(ふるや・ともこ)は1944年生まれ。青山学院大学文学部卒業。1975年に中部短歌会に入会し、春日井建、稲葉京子に師事。1984年の第30回角川短歌賞で「神の痛みの神学のオブリガード」で次席となり、1985年に同タイトルの第1歌集を出版した。 「神の…

一穂ノート・20

1953年発表のエッセイ「海の思想」は一穂が珍しく自らの半生を綴ったものである。幼少期から青春期に至るまでの明るい告白がなされている。 望郷は珠の如きものだ。私にとつて、それは生涯、失せることなきエメラルドである。 この一文から随想は始まる。そ…

御中虫『おまへの倫理崩すためなら何度(なんぼ)でも車椅子奪ふぜ』

愛媛県文化振興財団が主催している芝不器男俳句新人賞の第3回受賞者の第1句集である。定価953円と句集にしては安い。非常に個性的な作風の俳人である。 原爆忌楽器を全力で殴る チューリップ体は土に埋まりけり 暗檻ニ鵜ノ首ノビル十一時 女なんだ証拠はない…

現代歌人ファイルその135・我妻俊樹

我妻俊樹(あがつま・としき)は1968年生まれ。2002年頃から作歌を始め、歌葉新人賞には2003年の第2回から2006年の最終回まで最終候補に残り続けた。結社所属は無い。 我妻は2005年にビーケーワン怪談大賞を受賞するなど怪談作家としても活動しており、短歌…

一穂ノート・19

一穂の故郷・古平町は積丹半島北東部に位置している港町である。吉田家は三代続いたニシン漁場の網元だったが、一穂18歳のときに廃業し回漕店、書籍文具店に鞍替えしている。 一穂は古平を「白鳥古丹(カムイコタン)」と呼び、美しい思い出の地として終生愛…