2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧
高柳蕗子は1953年生まれ。明治大学文学部日本文学専攻卒業。1985年「かばん」入会。高柳の短歌はポンポン言葉が飛び出してくるような威勢のよさが特徴であり、決してべたべたした抒情性があるような作風ではない。奇想ともいえる意味不明な世界観が凄まじい…
「酔ってるの?あたしが誰かわかってる?」「ブーフーウーのウーじゃないかな」 第1歌集「シンジケート」から。穂村弘の代表作といえる一首であるが、これが代表とされている所以はまず会話体だということがあげられるだろう。「シンジケート」によくみられ…
吉野裕之は1961年生まれ。九州大学大学院農学研究科修士課程修了。1986年に「桜狩」、1988年に「個性」に入会。加藤克巳に師事、光栄堯夫に兄事している。歌風としてはライトヴァースとみなせそうなものが目に付く。俵万智が次席、荻原裕幸が最終候補となっ…
夢に来て金の乳首のちからびと清めの塩を撒きにけるかも 自選歌集「ラインマーカーズ」から。「手紙魔まみ」の番外編といえる「手紙魔まみ、イッツ・ア・スモー・ワールド」からの歌である。この一連はタイトル通り「相撲ワールド」であり、なぜか力士が戦場…
兵庫ユカは1976年生まれ。2000年に作歌をはじめ、2003年に「七月の心臓」で第2回歌葉新人賞次席。第1歌集「七月の心臓」は2006年に刊行された。兵庫の歌は都市の中の孤独感に満ち溢れており、穂村弘が「現代の若い世代の心情を象徴した歌」として引き合いに…
ハロー 夜。 ハロー 静かな霜柱。 ハロー カップヌードルの海老たち。 第3歌集「手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)」から。この歌集を代表する一首である。不自然なくらいひたすら優しい気分になって、とにかく何にでも語りかけるという状態が、「まみ」…
無数はどこに行くのか 渡辺玄英 『出口のない海』という映画で 若者たちは爆弾になって消えていった ショーワ二十年の海にはどこにも出口がなくて まばたきして六十年すぎると そこには漂白されたスクリーンがひろがり ぼくらには海がない そーりが靖国を参…
小池純代は1955年生まれ。立命館大学卒業。1987年に「未来」に入会し岡井隆に師事するが、現在は無所属。松岡正剛の編集学校で講師をしているらしい。「未来」には紀野恵や松原未知子のようにフェティッシュな言葉遊びを愛好する命脈があるが、小池もその流…
水滴のひとつひとつが月の檻レインコートの肩を抱けば 第1歌集「シンジケート」(1990)から。あまたの水滴のそれぞれに月が映っている情景を、月が水滴に閉じ込められているとみなして「月の檻」と表現している。卓抜した言語センスであり、非常に修辞のす…
小笠原和幸は1956年生まれ。岩手県立盛岡短期大学法経学部卒業。1984年に「不確カナ記憶」で第27回短歌研究新人賞、1992年に「テネシーワルツ」で第9回早稲田文学新人賞を受賞。ちなみに「テネシーワルツ」は短歌作品である。かつての早稲田文学新人賞は短歌…