トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

2009-08-01から1ヶ月間の記事一覧

穂村弘百首鑑賞・47

「フレミングの左手の法則憶えてる?」「キスする前にまず手を握れ」 第2歌集「ドライドライアイス」から。「フレミングの法則」とは中学校で教わる電動機に関する法則であるが、実際の科学知識なんてもうどうでもいい域に掲出歌は達している。穂村の相聞歌…

現代歌人ファイルその47・仙波龍英

仙波龍英は1952年生まれで、2000年に48歳の若さで病没している。早稲田大学法学部卒業。大学時代に藤原龍一郎の影響で短歌をはじめ、1974年ごろ「短歌人」に入会。1985年に第1歌集「わたしは可愛い三月兎」を刊行した。この歌集の版元は主に詩集を出している…

穂村弘百首鑑賞・46

生まれたてのミルクの膜に祝福の砂糖を 弱い奴は悪い奴 第1歌集「シンジケート」から。「シンジケート」という歌集はアメリカ型大量消費社会の隆盛が背景になっているが、それは苛烈な競争式資本主義に支えられた社会ということでもある。弱肉強食が徹底され…

現代歌人ファイルその46・小川真理子

小川真理子は1970年生まれ。明治大学大学院文学研究科仏文学専攻修士課程修了。1994年に「心の花」に入会し、佐佐木幸綱に師事。2001年に「逃げ水のこゑ」で第44回短歌研究新人賞を受賞した。第一歌集「母音梯形(トゥラペーズ)」は2002年に発行。フランス…

穂村弘百首鑑賞・45

ボールボーイの肩を叩いて教えよう自由の女神のスリーサイズを 第1歌集「シンジケート」から。アメリカ型大量消費社会への憧憬が「シンジケート」という歌集の特徴である。その中でも「自由の女神」というのはアメリカを象徴するものとしてはかなり直球の修…

現代歌人ファイルその45・吉村実紀恵

吉村実紀恵は1973年生まれ。お茶の水女子大学文教育学部外国文学科卒業。1995年より「開放区」に参加し、1997年「ステージ」で第40回短歌研究新人賞次席。1998年に第1歌集「カウントダウン」を発表した。 吉村の短歌のテーマは自分が現代人ではないように思…

現代歌人ファイルその44・加藤英彦

加藤英彦は1954年生まれ。1972年「創作」に、1976年「氷原」に入会。1988年、同人誌「NOA」創刊に参加。1998年に退会した後、2001年より「Es」同人。2007年、第1歌集「スサノオの泣き虫」で第13回日本歌人クラブ新人賞を受賞。歌集あとがきによると20代…

穂村弘百首鑑賞・43

にょにょーんとピザのチーズを曳きながらユダとイエスのくすくす笑い 自選歌集「ラインマーカーズ」から。初出は「かばん」2000年11月号であり、「手紙魔まみ」の時期の作品である。しかし初出の時点ではともに並んでいた「目覚めたら息まっしろで、これはも…