ちゃんと「今の」アニメやマンガやコミケにどっぷり浸かってる=わかってるプロの歌人というのが、短歌外部の人間には黒瀬珂瀾くらいしか把握できないのはなにかこう惜しまれるというかもったいないというかもっと増えてくれたら嬉しいなとは思っています。
http://d.hatena.ne.jp/lehmkuh/20090123/p1
こんなエントリを見つけた。現代短歌をよく読み込んだ上で、面白い話をしてくれている。
オタク趣味を持つ歌人自体は実は少なくない。引用先に挙がっている黒瀬珂瀾ももちろんそうだが、腐女子歌人の松野志保とか、コミケのスタッフをしていた生沼義朗とか、ほかにも松木秀、しんくわ、中島裕介、結構いろいろいる。ただ、外に向けてどんどん発信している例は確かに少ない気はする。いっぺん短歌雑誌で大々的にオタク歌人座談会でもやってみたらいいかもしれない。みんなドン引きするかもしれないが。
アニメに題をとった短歌というと、高島裕「旧制度(アンシャン・レジーム)」 所収の『私景―エヴァンゲリオン』という一連が秀逸であると思う。
(裏切りと呼んでいいのか?)あづさゆみ春あでやかに君が壊れる 高島裕
ひとり―ゆゑ神経(ネルフ)は軋むずたずたに錯乱しゆく物語たち
蒼き雨を浴びてふるへるてのひらが君をanimaと思ひ定めつ
私は1983年生まれなのでエヴァ直撃世代なのだが、第1話だけ見てロボットが出てきたという理由で見るのを止めてしまった。ロボットアニメに興味がなかったからである。ただGガンダムだけはよく見ていた。中学生のとき友人にアニメイトに連れて行かれたのだが、巨大な綾波人形が空に浮かんでいるのを見て怖くてたまらなくなり逃げ出してしまったという思い出がある。そんなわけでエヴァとはすれ違いまくりのままいまだに見たことがない。まあ「ドラゴンボールを読んだことがない」という事実に比べればそれほどマイノリティではないと思うが(あと、ジャンプを買ったこともない。友達の家で読んだことがあるだけ)。そんな私であってもこのエヴァンゲリオンに題をとった高島の一連は結構その美学に共鳴するところがあったりするのだ。