トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

短歌コラム

文学らじお・ショートソング

http://www.nicovideo.jp/watch/sm6934671 ニコニコ動画にて文学作品の朗読と解説を行っているネットラジオ。枡野浩一「ショートソング」を取り上げている。短歌の部分をどう朗読するのかと聴いてみたところ、ほとんどモノローグの延長線上のような聴こえ方…

オタク系歌人

ちゃんと「今の」アニメやマンガやコミケにどっぷり浸かってる=わかってるプロの歌人というのが、短歌外部の人間には黒瀬珂瀾くらいしか把握できないのはなにかこう惜しまれるというかもったいないというかもっと増えてくれたら嬉しいなとは思っています。 …

『[sai]』2号読んでみた。

[sai]2号届く。気鋭の若手歌人が集った同人誌である。編集人は鈴木暁世。今号は「からだからでるもの」がテーマとのこと。テーマゆえかエログロ的な歌が目立った。黒瀬珂瀾の評論「全円が影となるとき ―春日井建におけるHIVのイメージ―(1)」は力作だった…

「風通し」を読んでみる。

「風通し」が届いた。斉藤斎藤が発行人をつとめる同人誌である。9人の歌人が30首の連作を発表し、ネットの掲示板を使って批評と討論を交わし合うというものである。いずれも明晰な理論を持つ歌人たちであり、とても内容の濃い討論が繰り広げられていた。歌会…

結句六音のうた

短歌において「字余り」は大幅な破調でもない限りほとんど意識されることはない。言葉がどうしても字余りを要請する部分があるし、作者の方も半ば無自覚的に字余りを遣っているケースが多い(例外は初句七音くらいだろうか)。しかし「字足らず」は違う。韻…

アークの会・村木道彦

先日はアークの会に参加。「未来」の柳澤美晴さんや「りとむ」の樋口智子さんらを中心に札幌で行われている短歌の勉強会。今回のテーマは村木道彦「天唇」。そこで交わされた議論の内容をざっくりとまとめてみる。 村木道彦は1942年生まれで、本人の筆による…

映画化してみたい歌集

歌集というのはひたすら短歌ばかり並んでいるわけですが、全体で起承転結があってひとつのストーリーになっているものも少なくなかったりします。そんな歌集を読むたびに思うのが、映画化してみたらどうなるだろうということ。実際「智恵子抄」とか映像化さ…

理想的な時事詠とは

偶像の破壊のあとの空洞がたぶん僕らの偶像だろう 松木秀 この歌はタリバーンによるバーミヤンの仏像破壊をモチーフにした時事詠です。しかし現代日本のやりきれない閉塞感を見事なまでに表現しており、個別的な事件をテーマにしているにもかかわらず普遍的…

犯罪者を詠む

おれの中の射殺魔Nは逃げてゆく 街に羞(やさ)しい歌が溢れても 谷岡亜紀 バモイドオキ 僕だけのための神だから僕だけのために僕が名づけた 山田消児 BVDのブリーフつけて血に濡れてかの日の川俣軍司いとほし 島田修三 藤原龍一郎という歌人は固有名詞を「時…

カムバック歌人

狭い短歌界といえど毎年どんどん新人が出てくるわけで、その一方で消えてしまう歌人もいるわけです。まあ基本的に歌を詠み続けていればそうそう消えはしないのですが、短歌そのものから離れてしまうというケースも少なくないのです。寺山修司は途中で短歌か…

はたらく人々

昭和のはじめ頃に「プロレタリア短歌集」という本が出まして、厳しい生活を生きる労働者の姿が刻まれているわけです。しかし不思議なことに読んでいてあまり沈痛な気分にはならないんですね。 あぶれた仲間が今日もうづくまつてゐる永代橋は頑固に出来てゐら…