トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

2011-01-01から1年間の記事一覧

現代歌人ファイルその149・岸野亜紗子

岸野亜紗子(きしの・あさこ)は1978年生まれ。早稲田大学第二文学部卒。2001年「朔日」に入会し、外塚喬に師事。「sai」にも参加している。歌集は出していないが、アンソロジー「太陽の舟」(2007)にて作品の抜粋が読める。 みんなみんなほそい弦です 雨の…

現代歌人ファイルその148・福井まゆみ

福井まゆみ(ふくい・まゆみ)は1988年に「高知歌人」に入会。その後1990年「塔」に移り、1995年より「海風」にも所属している。桐朋学園大学ピアノ科を卒業したピアニストでもある。2003年に第1歌集「熱情ソナタ(アパッショナータ)」を刊行している。 経…

現代歌人ファイルその147・桝屋善成

桝屋善成(ますや・よしなり)は「未来」所属で岡井隆に師事。2000年度の未来年間賞を受賞し、2002年に第1歌集「声の伽藍」を出版した。岡井隆の解説によるとおそらく1964年生まれで、歌集が出た時点では三重県で郵便局員をしていたようだ。 作風は端正な文…

現代歌人ファイルその146・歌崎功恵

歌崎功恵(うたざき・のりえ)は2003年に「青遠」に入会、2006年に「未来」に入会し加藤治郎に師事した。「橋を越えて」で第1回石川啄木賞を受賞し、2010年に第1歌集「走れウサギ」を出版した。 歌崎は生命保険の営業の管理職として働く。「労働」というもの…

現代歌人ファイルその145・熊岡悠子

熊岡悠子(くまおか・ゆうこ)は1990年に「ヤママユ」に入会し前登志夫に師事。2004年に「茅渟(ちぬ)の地車(だんじり)」で第15回歌壇賞を受賞。2005年に第1歌集「茅渟の海」を刊行した。 師匠である前登志夫は人と神とが混じり合うような奈良・吉野の土…

一穂ノート・25

吉田一穂が詩人として目指した究極の目標は「神話の創世」であるように思う。学生時代に北欧神話に熱中した一穂は、歴史のない故郷北海道にエッダのような完成された北方神話をつくることを夢見ていた。もちろん北海道にはアイヌの神話はあったし、一穂自身…

現代歌人ファイルその144・五島諭

五島諭(ごとう・さとし)は1981年生まれ。早稲田短歌会出身で、現在は歌誌「pool」に所属している。 約束を果たせないまま物置の隅に眠っているシュノーケル ラジカセの音量をMAXにしたことがない 秋風の最中に どこか遠くで洗濯機が回っていて雲雀を見…

現代歌人ファイルその143・増田静

増田静(ますだ・しずか)は1972年生まれ。2002年に「ぴりんぱらん」で第1回歌葉新人賞を受賞。2003年に「未来」の加藤治郎選歌欄に入会するが、2004年退会。沖縄県の歌人であり、劇作家でもある。歌集「ぴりんぱらん」がある。 歌葉新人賞受賞作「ぴりんぱ…

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角川学芸出版「短歌」7月号に短歌『フタリダイアリー』10首を寄稿しました。短歌 2011年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2011/06/25メディア: 雑誌 クリック: 8回この商品を含むブログ (1件) を見る

現代歌人ファイルその142・杉森多佳子

杉森多佳子は1962年生まれ。女子美術大学卒業。1990年に中部短歌会に入会し、春日井建に師事。春日井建没後は「未来」に移り、加藤治郎に師事している。2007年に第1歌集「忍冬(ハネーサックル)」を出版した。忍冬とはスイカズラのことであるという。 杉森…

一穂ノート・24

実は吉田一穂が初めて出版した本は詩集ではない。1924年に出た童話集「海の人形」である。童話は詩と並んで一穂の創作の柱だった。生前に唯一得た生業も絵本の編集者の仕事である。大正期の児童文学の中心は鈴木三重吉主宰の「赤い鳥」である。一穂の童話観…

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6月20日(月)の北海道新聞朝刊の文化面にて、リレーエッセイ「北の地から北の地へ」に寄稿しました。アイヌ語地名研究家・山田秀三についての文章です。

現代歌人ファイルその141・日置俊次

日置俊次(ひおき・しゅんじ)は1961年生まれ。「かりん」所属。東京大学文学部国文科卒業。フランスのエクセ・マルセイユ大学、パリ第3大学に留学し、現在は青山学院大学教授。2004年に「ノートル・ダムの椅子」で第50回角川短歌賞次席。2006年、「ノートル…

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本阿弥書店「歌壇」7月号に、笹井宏之歌集『てんとろり』、上野久雄歌集『雪の甲斐駒』の書評を寄稿しました。http://homepage3.nifty.com/honamisyoten/kadan.htm歌壇 2011年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 本阿弥書店発売日: 2011/06/14メディア: 雑誌 ク…

一穂ノート・23

魚歌 ふる郷は波に打たるゝ月夜かな 鳥跡汀 鳥たつ跡の汀べに 拾流木 うちあげられし木を拾ひ 焼魚介 さかなを焼きて濁り酒 勺濁酒 獨りし酌めば夕波の 濤声騒 声もおどろに濤(なみ)騒ぐ 波蝕洞 ほこらにひゞく波の音 一穂の作品としては希少な漢詩である…

現代歌人ファイルその140・小林久美子

小林久美子(こばやし・くみこ)は1962年生まれ。女子美術大学卒業。1994年「未来」に入会し、岡井隆に師事。1996年に未来賞を受賞。歌集に「ピラルク」「恋愛譜」がある。なお、東直子の実姉である。 透明感のある口語短歌を特徴とするが、ただ淡くて実体感…

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詩歌梁山泊のホームページ「詩客」にて、短歌「水中眼鏡」10首を寄稿しました。http://shikaryozanpaku.sitemix.jp/

現代歌人ファイルその139・小野茂樹

小野茂樹(おの・しげき)は1936年生まれ。早稲田大学文学部国文科中退。1955年に「地中海」に入会、香川進に師事。1969年に第1歌集「羊雲離散」で第13回現代歌人協会賞を受賞したが、その翌年に若くして交通事故死している。その後遺歌集「黄金記憶」が発表…

一穂ノート・22

「海の思想」には一穂の学生時代の思い出も綴られている。16歳で上京し、図書館で翻訳書を漁る生活が始まったという。それまで一穂少年は美術に対する興味が強かった。しかし文学にのめり込むうちに自ら絵筆を執ることはなくなり、もっぱら鑑賞専門になった…

現代歌人ファイルその138・中沢直人

中沢直人(なかざわ・なおと)は1969年生まれ。東京大学法学部卒業後、ハーバード大学法科大学院修了。1999年に「未来」「かばん」に入会し、岡井隆に師事。2003年に「極圏の光」で第14回歌壇賞を受賞。2009年に出した第1歌集「極圏の光」で第16回日本歌人ク…

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札幌の古書店・書肆吉成が発行している「アフンルパル通信」第11号に、短歌「水銀遊戯」7首および長歌「歌え白鳥座(キグヌス)」を寄稿しました。「歌え白鳥座」は琴似ダイブのイベントで発表した朗読作品を一部改稿したものです。目次・申し込み先などは書…

現代歌人ファイルその137・しおみまき

しおみまきは1973年生まれ。「未来」に所属し、加藤治郎に師事。2008年に「ムリムラさん」で第51回短歌研究新人賞の最終選考を通過した。歌集は未刊行。 初めてしおみを知ったのは毎日新聞の歌壇である。ひらがなを多用したやわらかな字面と、呪文のような韻…

一穂ノート・21

エッセイ「海の思想」に綴られている一穂の少年期の回想である。津軽海峡に真向かう小さな漁村に彼は暮らしていた。 小さな村で、殆どが萱葺の軒並であつた。漁業といふ集団作業の必要から、この古い館はマクベスの砦のごとく大家族を擁してゐた。若くして家…

現代歌人ファイルその136・古谷智子

古谷智子(ふるや・ともこ)は1944年生まれ。青山学院大学文学部卒業。1975年に中部短歌会に入会し、春日井建、稲葉京子に師事。1984年の第30回角川短歌賞で「神の痛みの神学のオブリガード」で次席となり、1985年に同タイトルの第1歌集を出版した。 「神の…

一穂ノート・20

1953年発表のエッセイ「海の思想」は一穂が珍しく自らの半生を綴ったものである。幼少期から青春期に至るまでの明るい告白がなされている。 望郷は珠の如きものだ。私にとつて、それは生涯、失せることなきエメラルドである。 この一文から随想は始まる。そ…

御中虫『おまへの倫理崩すためなら何度(なんぼ)でも車椅子奪ふぜ』

愛媛県文化振興財団が主催している芝不器男俳句新人賞の第3回受賞者の第1句集である。定価953円と句集にしては安い。非常に個性的な作風の俳人である。 原爆忌楽器を全力で殴る チューリップ体は土に埋まりけり 暗檻ニ鵜ノ首ノビル十一時 女なんだ証拠はない…

現代歌人ファイルその135・我妻俊樹

我妻俊樹(あがつま・としき)は1968年生まれ。2002年頃から作歌を始め、歌葉新人賞には2003年の第2回から2006年の最終回まで最終候補に残り続けた。結社所属は無い。 我妻は2005年にビーケーワン怪談大賞を受賞するなど怪談作家としても活動しており、短歌…

一穂ノート・19

一穂の故郷・古平町は積丹半島北東部に位置している港町である。吉田家は三代続いたニシン漁場の網元だったが、一穂18歳のときに廃業し回漕店、書籍文具店に鞍替えしている。 一穂は古平を「白鳥古丹(カムイコタン)」と呼び、美しい思い出の地として終生愛…

現代歌人ファイルその134・高木佳子

高木佳子(たかぎ・よしこ)は1972年生まれ。1999年に「潮音」に入会し、波汐國芳に師事。2005年に「片翅の蝶」で第20回短歌現代新人賞を受賞。2007年に刊行した第1歌集「片翅の蝶」で第5回短歌新聞社第一歌集賞、第14回日本歌人クラブ新人賞を受賞した。福…

一穂ノート・18

空中楼閣 何をねらふ艦砲の仰角、 原爆実験で沙漠に出来た硝子帯、 海のない燈台、反射炉、ピサの斜塔、 バビロンならぬ、ここ廃都のどまん中にして、 二十世紀バベルの塔! (利益社会ではあっても国家ではない) ハンザ同盟の硝子張の司令塔だ。 いや下水…