トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

現代歌人ファイル

現代歌人ファイルその91・中津昌子

中津昌子は1955年生まれ。東京女子大学卒業。1987年に「かりん」に入会し馬場あき子に師事。1991年に「風を残せり」で第6回短歌現代新人賞を受賞している。「風を残せり」「遊園」「夏は終はつた」「芝の雨」の4冊の歌集がある。 第1歌集「風を残せり」は199…

現代歌人ファイルその90・田中佳宏

田中佳宏は1943年生まれで、2008年に病没している。放射線技師を経て故郷の埼玉県妻沼で農業を継ぎ、「新日本歌人」や「個性」などに参加した。 1971年に出された第1歌集「黙って墓場へ降りてゆくわけにいかない」はその大胆なタイトルが印象的である。加藤…

現代歌人ファイルその89・棚木恒寿

棚木恒寿は1974年生まれ。立命館大学理工学部卒業。1990年「音」入会、1997年に第14回「音」短歌賞を受賞。2007年、第1歌集「天の腕」で第51回現代歌人協会賞を受賞した。高校生時代から歌を始めていることになり、かなり出会いは早い。高校時代の部活の顧問…

現代歌人ファイルその88・山崎郁子

山崎郁子は1963年生まれ。園田学園女子大学卒業。「短歌人」「かばん」に所属し、1990年に歌集「麒麟の休日」を刊行。また、穂村弘の歌集「シンジケート」の担当編集者であったことも知られている。 山崎の短歌は基本的に口語旧仮名で作られている。私自身も…

現代歌人ファイルその87・長尾幹也

長尾幹也は1957年生まれ。滋賀大学経済短期大学卒業。結社に所属せず朝日新聞の歌壇に長年投稿を続け、1993年に無所属のまま第1歌集「月曜の朝」を出版した。同年に「青幡」に入会。1994年には朝日歌壇賞を受賞した。 短歌におけるプロフェッショナルとアマ…

現代歌人ファイルその86・沢田英史

沢田英史は1950年生まれ。京都大学文学部卒業。短歌を始めたのは1989年、親友の死によって「思いが不意に歌の形をとった」という。1992年に「ポトナム」に入会し上野晴夫に師事。1997年「異客」で第43回角川短歌賞を受賞。1999年、第1歌集「異客」で第25回現…

現代歌人ファイルその85・田中章義

田中章義は1970年生まれ。「心の花」所属。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の1990年に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞し、20歳にして第1歌集「ペンキ塗りたて」を出版した。 「ペンキ塗りたて」のあとがきにはこう書かれている。「巧い歌…

現代歌人ファイルその84・吉田漱

吉田漱は1922年生まれで2001年に没。東京美術学校卒業。1947年に「アララギ」に入会し、のちに「未来」創刊に参加。近藤芳美に兄事した。「未来」では編集担当者や運営委員として長く携わったようだ。1995年に「バスティーユの石」で第31回短歌研究賞を受賞…

現代歌人ファイルその83・しろいろ

しろいろは主に「現代詩フォーラム」にて短歌を発表している歌人であり、性別や年齢など詳しいことはわからない(おそらく女性だろうか)。ただ非常に才気のある歌を作っており、注目できる存在である。 「水銀のかたむくほうへ やさしさは時計仕掛けのはや…

現代歌人ファイルその82・塩野朱夏

塩野朱夏は2004年に第1歌集「そして彼女は眼をひらいた」を刊行している歌人であるが、歌集にはいっさいの個人情報が書かれていないため、性別も年齢も歌歴もいっさいわからない。歌集冒頭に「登場人物」としてジキル博士やハイド夫人といった名前があらわれ…

現代歌人ファイルその81・尾崎朗子

尾崎朗子は1965年生まれ。1999年に「かりん」に入会し、2008年に第1歌集「蝉観音」を刊行した。もっとも歌集にはパーソナルなデータはあまり触れられておらず(年齢も、歌集には書かれておらずこの歌集が評されている文にて知った)。歌の中にだけあらわれる…

現代歌人ファイルその80・柴田瞳

柴田瞳は1979年生まれ。法政大学文学部英文科卒業。「心の花」を経て「かばん」所属。「月は燃え出しそうなオレンジ」で2002年に第45回短歌研究新人賞候補となり、2004年に第1歌集「月は燃え出しそうなオレンジ」を刊行した。 短歌をはじめたのは早く、高校…

現代歌人ファイルその79・辰巳泰子

辰巳泰子は1966年生まれ。京都府立大学女子短期大学部国語科卒業。10代の前半にはすでに作歌を始めていたという早熟の歌人で、1985年に「短歌人」入会。1987年、「家族の季」で第33回角川短歌賞佳作となり、1990年に第1歌集「紅い花」で第34回現代歌人協会賞…

現代歌人ファイルその78・筑波杏明

筑波杏明は1924年生まれ。立正大学文学部卒業。1947年に警察官となり、翌年窪田章一郎主宰の「まひる野」に入会した。1961年、第1歌集「海と手錠」を刊行。その他「時報鳴る街」「Q」という歌集がある。筑波の名を高めたのは「海と手錠」所収のこの一首であ…

現代歌人ファイルその77・花山周子

花山周子は1980年生まれ。武蔵野美術大学卒業。1999年に「塔」に入会。2007年に第1歌集「屋上の人屋上の鳥」を出し、第16回ながらみ書房出版賞を受賞した。母は「塔」選者の花山多佳子である。 「屋上の人屋上の鳥」という歌集の大きな特徴は収録歌数の多さ…

現代歌人ファイルその76・大松達知

大松達知は1970年生まれ。上智大学外国語学部英語学科卒業。「コスモス」「桟橋」所属。高校時代に作歌を始め、これまでに「フリカティブ」「スクールナイト」「アスタリスク」の3歌集を出している。本業は私立高校の英語教師。蛇足ながら、千葉ロッテファ…

現代歌人ファイルその75・松崎英司

松崎英司は1960年生まれ。2002年「星座」入会。2006年に「青の食單」で第52回角川短歌賞次席。本職は料理人であり、ホテルの料理長も務めている。「青の食單」はすべての歌に食材が詠み込まれているというユニークさから、小池光に高く評価された。この食材…

現代歌人ファイルその74・小黒世茂

小黒世茂は1948年生まれ。「玲瓏」に所属し塚本邦雄に師事。1999年に「隠国」で第10回歌壇賞を受賞。「隠国」「猿女」「雨たたす村落」の三つの歌集がある。 小黒は和歌山市出身で、紀州熊野に魅せられその地を舞台とした歌を多数詠んでいる。その特徴は一言…

現代歌人ファイルその73・澤村斉美

澤村斉美は1979年生まれ。京都大学大学院文学研究科美学美術史学専攻博士課程中退。京大短歌会を経て、「塔」「豊作」に所属。2006年に「黙秘の庭」で第52回角川短歌賞に選ばれ、第1歌集「夏鴉」で第34回現代歌人集会賞、第9回現代短歌新人賞を受賞した。 初…

現代歌人ファイルその72・柚木圭也

柚木圭也は1964年生まれ。1986年に「短歌人」入会。1993年に「フリー」で第38回短歌人新人賞、1999年に「心音」で第44回短歌人賞を受賞し、「短歌人」のホープと目されていたが、2001年より長く休詠状態にあった。2008年に活動再開し、第1歌集「心音(ノイズ…

現代歌人ファイルその71・菊池裕

菊池裕は1960年生まれ。高校時代から寺山修司の天井桟敷に在籍し、桐朋学園大学芸術学部で演劇を学んだ。1987年中部短歌に入会し、春日井建に師事。1992年より「開放区」にも参加。2005年に、第1歌集「アンダーグラウンド」で第13回ながらみ書房出版賞を受け…

現代歌人ファイルその70・大林明彦

大林明彦は1946年生まれ。早稲田大学教育学部国語国文学科卒業。福島泰樹、中野菊夫に師事。「一路」「早稲田短歌」「反措定」「樹木」などに所属した。1975年に第1歌集「きみはねむれるか」を出している。 「きみはねむれるか」は口語短歌のエポックの一つ…

現代歌人ファイルその69・早坂類

早坂類は1959年生まれ。東京デザイナー学院卒業。「詩歌」を経て「未来」に所属し、岡井隆に師事。1986年、「詩とメルヘン賞」受賞。1988年、第31回短歌研究新人賞次席。さらに1990年には「ユリイカの新人」に選ばれ、詩と短歌の両輪での活躍を開始した。199…

現代歌人ファイルその68・多田智満子

多田智満子は1930年生まれで、2003年に没している。慶應義塾大学英文科卒業。歌人というよりも詩人として有名であり、詩集「川のほとりに」で現代詩花椿賞、「川のある国」で読売文学賞などを受賞している。歌集は没後の2005年に出された「遊星の人」一冊の…

現代歌人ファイルその67・大村陽子

大村陽子は1956年生まれ。1987年「形成」入会。1991年に「さびしい男この指とまれ」で第2回歌壇賞を受賞し、1993年に第1歌集「砂はこぼれて」を刊行した。 大村の歌の特徴は、きらめくような詩的センスの中に巧みに毒を混ぜてくるところにある。世界を見る視…

現代歌人ファイルその66・吉田純

吉田純(よしだ・あつし)は1976年生まれ。北海学園大学大学院文学研究科博士課程にて、菱川善夫に学んだ。2002年に「大日本果汁圧搾人夫」にて短歌研究新人賞候補となり、2004年に第1歌集「形状記憶ヤマトシダ類」を刊行し、北海道新聞短歌賞佳作を受賞した…

現代歌人ファイルその65・中川宏子

中川宏子は「未来」所属で、岡井隆に師事。2007年に第1歌集「いまあじゆ」を出している。あとがきによると大学ではドイツ文学を学んでいたという。解説の岡井隆は、「一行の中に「私」を含めて架構する(作中主体を、作者から独立させる)ことが、どこまで可…

現代歌人ファイルその64・小野寺幸男

小野寺幸男は1938年生まれ。「未来」所属。岩手県に生まれ、高校卒業後上京して肉体労働に従事した後、タクシー運転手を生業としていたという。1980年に第1歌集「樹下仮眠」を刊行している。 まず目を引くのが、タクシー運転手としての職業詠である。きつい…

現代歌人ファイルその63・塘健

塘健は1951年生まれ。塘は「つつみ」と読む。別府大学卒業。「玲瓏」に所属し、塚本邦雄に師事。1982年、「一期不会」で第28回角川短歌賞を受賞している。師譲りの主知的かつ耽美的な作風が特徴である。「火冠」「出藍」の二つの歌集がある。 われと言ふわれ…

現代歌人ファイルその62・杉原一司

杉原一司は1926年生まれで、1950年に23歳の若さで亡くなっている。現在において杉原の名前は、もっぱら塚本邦雄の親友として知られている。天理語学専門学校(現在の天理大学)フランス語学科を卒業。「日本歌人」にて前川佐美雄に師事。1949年に塚本と同人…