トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

2010-01-01から1年間の記事一覧

現代歌人ファイルその100・西田政史

西田政史(にしだ・まさし)は1962年生まれ。愛知県立大学外国語学部卒業。「玲瓏」にて塚本邦雄に師事し、1990年に「ようこそ!猫の星へ」で第33回短歌研究新人賞を受賞。1993年に歌集「ストロベリー・カレンダー」を刊行している。 西田の文学とのつながり…

穂村弘百首鑑賞・99

郵便配達夫(メイルマン)の髪整えるくし使いドアのレンズにふくらむ四月 第1歌集「シンジケート」から。角川短歌賞投稿作の一連からすでに含まれている一首である。ベルが鳴ってドアのレンズを覗くと、凸レンズごしにくしで髪を整えている郵便配達夫の姿が…

現代歌人ファイルその99・西王燦

西王燦(にしおう・さん)は1950年生まれ。立命館大学文学部日本文学科卒業。1982年「バードランドの子守歌」で第28回角川短歌賞次席。1976年より「短歌人」所属。歌集は1982年に「バードランドの子守歌」を出版している。その収録歌を並べてみよう。 オート…

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NHK短歌9月号「ジセダイタンカ」のページにコラム「『昭和』の精算 新世紀の穂村弘」を寄稿しました。 お目通しいただけるとうれしいです。 http://www.nhk.or.jp/tankahaiku/ NHK 短歌 2010年 09月号 [雑誌]出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2010/…

現代歌人ファイルその98・錦見映理子

錦見映理子は1968年生まれ。聖心女子大学文学部卒業。1997年「開放区」に入会。1998年に「婚姻届」で第44回角川短歌賞最終候補。2003年に第1歌集「ガーデニア・ガーデン」を刊行した。現在は「未来」所属。 南下する前線 北上するエロス 口移さるる水こぼす…

現代歌人ファイルその97・宮田長洋

宮田長洋は1943年生まれ。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。1969年に「短歌人」に入会し、2005年、「魔都には闇を」で短歌人賞を受賞した。 宮田は東京の武蔵野生まれである。といっても現在の武蔵野市は本来の武蔵野ではなく、現在でいう東京23区の西部のあ…

現代歌人ファイルその96・甲村秀雄

甲村秀雄は1941年生まれ。國學院大學大学院日本文学研究科修士課程修了。香川進と岡野弘彦に師事。「地中海」を経て現在は「ナイル」の代表。 第1歌集「棘よ、憎まれてなほ」は1978年に出版。この歌集が収められたアンソロジー「青春歌のかがやき 第一歌集の…

現代歌人ファイルその95・上野久雄

上野久雄は1927年生まれで2008年没。横浜専門学校(現・神奈川大学)中退。1950年「アララギ」入会、近藤芳美の指導を受ける。1951年「未来」創刊に参加。1983年「みぎわ」創刊。山梨県を地盤として喫茶店のマスターをしながら活動していたという地方歌人で…

現代歌人ファイルその94・杉崎恒夫

杉崎恒夫は1919年生まれで、2009年に90歳で死去している。前田透主宰の「詩歌」を経て1984年に「かばん」に参加。1987年より「礁」編集委員。同年に第一歌集「食卓の音楽」を刊行。第二歌集「パン屋のパンセ」は事実上の遺歌集として2010年に刊行された。歌…

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NHK短歌8月号の「ジ・セ・ダ・イ・タ・ン・カ」のコーナー(天野慶さん編集)にて、『尾翼とクローバ』5首を寄稿しました。NHK 短歌 2010年 08月号 [雑誌]出版社/メーカー: 日本放送出版協会発売日: 2010/07/20メディア: 雑誌 クリック: 1回この商品を含むブ…

現代歌人ファイルその93・北川草子

北川草子(きたがわ・そうこ)は1970年生まれで、2000年に若くして没している。早稲田大学第一文学部西洋史学科卒業。早稲田短歌会を経て「かばん」に入会し、1994年に「人魚」で第9回短歌現代新人賞佳作。また、早大児童文学研究会では北川想子の名前で童話…

穂村弘百首鑑賞・92

「さかさまに電池を入れられた玩具(おもちゃ)の汽車みたいにおとなしいのね」 第1歌集「シンジケート」から。「シンジケート」において括弧にくくられた言葉は女性の発話であり、絶対的に触れられない他者の言葉としてあらわれる。「おとなしいのね」とい…

現代歌人ファイルその92・小笠原魔土

小笠原魔土(おがさわら・まど)は1967年生まれ。東海大学大学院海洋学研究科修士課程修了。1990年に加藤克巳の「個性」に入会、「個性」解散後は沖ななもの「熾」に寄っている。第1歌集「真夜中の鏡像」は2005年に刊行された。 ペンネームからはわかりにく…

北海道歌人会総会のトークセッションに参加します

7月4日(日)に行われる北海道歌人会総会にて、トークセッションのパネラーをすることになりました。 日時 2010年7月4日(日)午前11時〜12時 場所 札幌市中央区大通西13丁目 札幌市教育文化会館 道内若手歌人3人によるトークセッション パネラー 北辻千展(…

現代歌人ファイルその91・中津昌子

中津昌子は1955年生まれ。東京女子大学卒業。1987年に「かりん」に入会し馬場あき子に師事。1991年に「風を残せり」で第6回短歌現代新人賞を受賞している。「風を残せり」「遊園」「夏は終はつた」「芝の雨」の4冊の歌集がある。 第1歌集「風を残せり」は199…

穂村弘百首鑑賞・90

笑い声まだ響いてる ミル・マスカラスの覆面(マスク)が剥された夜 第2歌集「ドライドライアイス」から。ミル・マスカラスというのはメキシコの著名な覆面レスラーである。「ドライドライアイス」が発刊された頃から活動しているが、なんと今も現役らしい。…

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角川「短歌」7月号に『ランブルフィッシュ』10首を寄稿しました。 同号には同じ「かばん」の同人である辻井竜一さんも寄稿しておられます。 お目通しいただけたら幸いです。短歌 2010年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 角川学芸出版発売日: 2010/06/25メディ…

現代歌人ファイルその90・田中佳宏

田中佳宏は1943年生まれで、2008年に病没している。放射線技師を経て故郷の埼玉県妻沼で農業を継ぎ、「新日本歌人」や「個性」などに参加した。 1971年に出された第1歌集「黙って墓場へ降りてゆくわけにいかない」はその大胆なタイトルが印象的である。加藤…

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「短歌研究」7月号の特集「批評について思うこと」に『批評体験の原点』を寄稿しました。 お目通しいただけると幸いです。短歌研究 2010年 07月号 [雑誌]出版社/メーカー: 短歌研究社発売日: 2010/06/21メディア: 雑誌この商品を含むブログを見る

穂村弘百首鑑賞・89

まなざしも言葉も溶けた闇のなかはずれし受話器高く鳴り出す 第1歌集「シンジケート」から。投稿作の「シンジケート」からすでにある歌だが、この連作には「電話」というモチーフが頻出する。作られたのは80年代であるので、もちろん携帯電話ではなく受話器…

カルチャー講座の講師を務めました。

札幌市自閉症・発達障がい支援センター「おがる」様主催のカルチャー講座にて、成人当事者として講師を務めてきました。参加者の方々は主に発達障害児の保護者の方や特殊教育の関係者の方でした。発達障害の当事者としての体験談に基づいた歌を解説したあと…

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「短歌新聞」6月号の「新人立論」の欄に書かせていただきました。 「かばん関西」ブログhttp://kabanwest.exblog.jp/に転載させていただいております。 お目通しいただけると幸いです。

現代歌人ファイルその89・棚木恒寿

棚木恒寿は1974年生まれ。立命館大学理工学部卒業。1990年「音」入会、1997年に第14回「音」短歌賞を受賞。2007年、第1歌集「天の腕」で第51回現代歌人協会賞を受賞した。高校生時代から歌を始めていることになり、かなり出会いは早い。高校時代の部活の顧問…

現代歌人ファイルその88・山崎郁子

山崎郁子は1963年生まれ。園田学園女子大学卒業。「短歌人」「かばん」に所属し、1990年に歌集「麒麟の休日」を刊行。また、穂村弘の歌集「シンジケート」の担当編集者であったことも知られている。 山崎の短歌は基本的に口語旧仮名で作られている。私自身も…

現代歌人ファイルその87・長尾幹也

長尾幹也は1957年生まれ。滋賀大学経済短期大学卒業。結社に所属せず朝日新聞の歌壇に長年投稿を続け、1993年に無所属のまま第1歌集「月曜の朝」を出版した。同年に「青幡」に入会。1994年には朝日歌壇賞を受賞した。 短歌におけるプロフェッショナルとアマ…

現代歌人ファイルその86・沢田英史

沢田英史は1950年生まれ。京都大学文学部卒業。短歌を始めたのは1989年、親友の死によって「思いが不意に歌の形をとった」という。1992年に「ポトナム」に入会し上野晴夫に師事。1997年「異客」で第43回角川短歌賞を受賞。1999年、第1歌集「異客」で第25回現…

現代歌人ファイルその85・田中章義

田中章義は1970年生まれ。「心の花」所属。慶應義塾大学総合政策学部卒業。大学在学中の1990年に「キャラメル」で第36回角川短歌賞を受賞し、20歳にして第1歌集「ペンキ塗りたて」を出版した。 「ペンキ塗りたて」のあとがきにはこう書かれている。「巧い歌…

現代歌人ファイルその84・吉田漱

吉田漱は1922年生まれで2001年に没。東京美術学校卒業。1947年に「アララギ」に入会し、のちに「未来」創刊に参加。近藤芳美に兄事した。「未来」では編集担当者や運営委員として長く携わったようだ。1995年に「バスティーユの石」で第31回短歌研究賞を受賞…

現代歌人ファイルその83・しろいろ

しろいろは主に「現代詩フォーラム」にて短歌を発表している歌人であり、性別や年齢など詳しいことはわからない(おそらく女性だろうか)。ただ非常に才気のある歌を作っており、注目できる存在である。 「水銀のかたむくほうへ やさしさは時計仕掛けのはや…

現代歌人ファイルその82・塩野朱夏

塩野朱夏は2004年に第1歌集「そして彼女は眼をひらいた」を刊行している歌人であるが、歌集にはいっさいの個人情報が書かれていないため、性別も年齢も歌歴もいっさいわからない。歌集冒頭に「登場人物」としてジキル博士やハイド夫人といった名前があらわれ…