虚無とジェリー

何もない

生活をともにするというぐらぐらのジェンガ

一緒に暮らしている彼女も働いている。残念ながら僕一人の稼ぎではやっていけない。家賃や光熱費は僕が、食費は彼女が出すことが暗黙の了解のようにいつの間にか決まっている。生活のハード面を僕が、ソフト面を彼女が担当しているのだと勝手に解釈している。彼女の了承は得ていない。

 

けれど、「生活のハード/ソフト」という区分は、はっきりと割り切れるものではない。家具などは明らかにハードだから僕が買った。しかし生活のなかで当然発生するこまごまとした消耗品は、どちらに含まれるか怪しい。トイレットペーパーや洗剤などはスーパーで買うので、食料品と一緒に彼女が支払いをしている。食料品と生活用具とでわざわざ会計を分けるのは面倒だからだ。そういうとき僕は彼女が会計をしている隙間をつき、カゴを運んで買い物袋に詰める準備に入る。それが彼女から仰せつかっている仕事なのだ。支払いをしない罪悪感は、とりあえず体を動かすことで埋めている。

 

しかしたまに事前に千円程度出すように求められることがある。彼女の中で「スーパーにあるけれど、自分が支払う管轄ではないものも今買うよ」という意味だ。でもそれが歯磨き粉だったりゴミ袋だったり毎回バラバラで一貫性がないので、彼女の中での支払い区分がどうなっているのかはよくわからない。

 

食器などは生活のハードっぽい気がするが、3COINSなどで彼女が買ってくる。彼女のセンスに見合うものな必要があるからだろうと勝手に解釈している。僕には、自分ひとりで勝手に解釈していることがやたらと多い。そして彼女を怒らせてしまうのはたいてい、勝手にしていた解釈が間違っていたときだ。明文化されているわけでもないルールが積み重なって成り立っているこの生活は、いつもぐらぐらのジェンガだ。話し合いもないまま、なあなあで積み上がってゆく「生活」というのは、なんだか高層建築みたいだ。

 

そして明日も彼女に「早く本棚を買え」と言われるのだろう。わかっている。それは間違いなくハードだ。