トナカイ語研究日誌

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文学らじお・ショートソング

http://www.nicovideo.jp/watch/sm6934671

 ニコニコ動画にて文学作品の朗読と解説を行っているネットラジオ枡野浩一「ショートソング」を取り上げている。短歌の部分をどう朗読するのかと聴いてみたところ、ほとんどモノローグの延長線上のような聴こえ方だった。五七五七七だと言われてからああ確かにそうだと気付く人も出てきそうな自然な読み方になっている。なかなか面白い現象である。この方には、是非ともこれからも短歌に親しんでもらいたいものである。
 「ショートソング」には今年の1月に26歳の若さで亡くなった笹井宏之の短歌も収められているが、笹井の歌だけが一冊の中でもきわだってヘンテコである。歌集「ひとさらい」だけを読む分には高度に詩的ではあるもののそれほど異質な短歌とは感じない。「新彗星」で『未来』の歌人たちと混じっていもそれほど感じない。しかし「ショートソング」の中だけにおいては笹井宏之は明らかに浮いている歌人である。それはおそらく、笹井の歌が社会性を吹っ飛ばして神の領域に直接アクセスしようとしているからなのだと思う。人間の心を突き刺そうとするのではなく、神と対話しようとしている短歌。枡野浩一の短歌に潜む無神論的な要素(もちろんそれは全く悪いことではなく、大きな個性である)とは、突き詰めていけばどこかで相容れない領域に入っていくように思える。そしてこの差異は、現実においてはエピゴーネンを生み出せるか否かという現象としてあらわれる。枡野浩一エピゴーネンになるのは難しくないが、笹井宏之のエピゴーネンになるのは同じ神を共有しえない限りきわめて難しい。なろうとしても、ただ意味不明な言葉を連ねただけの短歌になってしまいかねないことだろう。
  ちなみに、ニコニコ動画には穂村弘の「世界音痴」を延々60分くらい朗読しているラジオ番組もアップされている。需要は謎である。