トナカイ語研究日誌

歌人山田航のブログです。公式サイトはこちら。https://yamadawataru.jimdo.com/

トナカイ語入門

 短歌のブログをつくってみました。タイトルを考える時間の方が長かった気がします。

  また会議ねえまた会議トナカイのことばでも研究してるのか?  荻原裕幸

 この歌からブログのタイトルをとってみました。わけのわからない、理解する価値のないものとして使われている「トナカイのことば」。
 しかし僕はそんなトナカイ語をもくもくと読み解いてみたいのです。思えば近代以降の短歌の流れというのはすごい勢いで変化していっています。
 お年寄りの歌人にとっては若者の短歌はトナカイ語かもしれませんし、逆に若い人にとっては文語バリバリの歌とかよくわからないかもしれません。さらにいえば短歌に興味がない人にとってはそんなものひっくるめて全部トナカイ語かもしれません。 
 短歌含め詩的言語というものは、一般的な散文の言語とは全く違う構造で成り立っています。

  キス未遂 僕らは貨車に乗り込んで真夏が軋みだすのを聴いた  千葉聡

 一読して、いかにもさわやかで切ない青春のイメージがビジュアルとして眼前に広がってきます。しかし人間が貨車に乗り込むような状況が本当にあるのかとか(実際そんなことしたら駅員が激怒して駆けつけてくる気がします。)、「真夏が軋む」って何だとか、そういう突っ込みどころがあります。言語の世界でしかありえないような状況を、読者に映像的に受け止めることを可能にする。そこに詩的言語の面白さがあります。しかし異国の言語に翻訳が必要なように、詩的言語もまた翻訳を必要とするのです。日本語で書かれていても、厳密には日本語と似て非なるものなのです。
 このブログでは短歌という「トナカイ語」をどうにかして翻訳しようと格闘してみます。